大学職員列伝。


- vol.2 -

科学の子




原子力についてどんなイメージを持ってますか?

危ない。放射能汚染が心配。広島、長崎、チェルノブイリ。
なんか否定的なイメージかな。
まあ、中には肯定的に考えるひともいるとは思いますが、
自分の住んでる町に原発がやってくるとしたら、
まあ一歩引いちゃいますよね。
わたし。そう、わたし自身はすこし懐疑的です。

だいこんさんたちは知らないかも知れませんが、
10年前広瀬隆というひとの「危険な話」という本が大ヒットして、
一つの社会現象になりました。要は反原発の本なんですが、
当時の大学生をみんな反原発主義者に変えるほどの
影響があったものです。

当然、わたしもその本を読みましたから、
現在にいたるまで原発と聞くとまず”危ない”と思うようになりました。

ところで、今日はそれよりさらに前のお話。
わたしが中学生の頃の話です。
そのころ、原子力は夢のエネルギーでした。
なにしろ、ひとびとは石油ショック(こんな言葉も知らない
んだろうな、今の子は)を経験し、
化石燃料は決して無尽蔵にあるものではないということを
実体験として思い知らされたのですから。
(ちなみに、その頃「石油はあと10年で
無くなる」とか本に書いてあったんだけど・・)

しかし、原子力なら安全でクリーンなエネルギーが
それこそ無尽蔵に手に入る、鉄腕アトム
だって原子力を使ってるぞ、みたいな感じで、
「そうか石油なんてもう無くなちゃうし、これからは
原子力の時代だ。ぼくも頑張るぞ(意味不明だけど)」
とか思ったもんです。

さらに当時の中学生を興奮させたのはスペースシャトル計画でした。
いままでのドン臭いロケットに比べて、いちおう飛行機の形をしたオービター。
それが宇宙に飛び立って、また帰ってくる。
これはまるでSFアニメの世界ではないですか。
地球から続々と打ち上げられるスペースシャトル。
宇宙ステーション。そして他の惑星への植民。
夢はどんどん膨らみました。

「ねえねえ、2000年までにワープって、できるようになると思う」
「絶対、大丈夫だよ」
「クルマのエンジンっていつ原子力になるのかな?」
「2000年までにはOKだよ」

これは実際にあった会話です。ぼくたちは大真面目でした。
将来なりたいもの、それは「原子力の研究者」か「宇宙飛行士」だったんです。

夢はいつか壊れていきます。
原子力は夢のエネルギーの座を追い落とされ、
忌み嫌われるものになりました。
スペースシャトル・チャレンジャーは爆発しました。
そしてなにより科学は正義では無く、ビジネスになってしまいました。

でも思うんです。
やっぱり科学の進歩はすばらしい。
たったひとつの発明がこの世から
飢えをなくしてくれる。科学の発達が、
光の闇を払うように、世界に平和をもたらしてくれる。
そしてひとはいつの日か、
地球から宇宙へその世界を広げていくんじゃないかと。

”心やさし ラララ 科学の子 十万馬力だ 鉄腕アトム”
(そう言えば、アトムの妹はウランちゃんでした)


1998-11-14-MON



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